秋の楽しみ(ほぼ食の話のみ)

日本には四季があり、日本人ほど季節の移り変わりに繊細な民族はいない……。昔からよく言われていることだが、それは本当だろうか?

私個人の印象では、かつて東京で暮らしていた頃に比べ、ドイツでは田舎に住んでいるせいか、より季節ごとの違いが鮮明に感じられる気がする。この辺りの気候は、日本だと札幌に近いという人もいるように、もちろん冬は東京より寒くて長く(ちなみに本日、12月5日の気温は最高2度、最低−2度)、秋になるのも9月の頭くらいからと早い。湿度が低く爽やかで暑くなりすぎない夏が終わってしまうのはいつも寂しいが、それでも秋には秋の楽しみがある。

まず酒飲みの私としては、一番に秋の訪れを感じるのは、ワイナリーやスーパーなどで“ノイアーヴァイン”が売り出されることだ。

ノイアーヴァインとは、直訳すれば新しいワインとなるが、ワインになる前に発酵段階にあるお酒のこと。白濁しているのが特徴で、味はまさにブドウジュースとワインの中間という感じ? 日本で言えばにごり酒に近いのかもしれないが、ちょっと甘口な口触りのよさで、ついついすすんでしまう。

このノイアーヴァインのようなワインになる前のお酒は、ドイツのほかはスイス、オーストリアや北イタリアの一部で作られているが、フランス人によれば「邪道」だそう。けれど、発酵によって瓶が爆発する可能性があり、蓋を完全に閉めない状態で売らなければいけないため搬送が難しく、ワインの産地近くでないと入手できないというプレミア感がある。

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%92

白濁しているノイアーヴァイン。ワインの生産地にあるレストランでも9月から10月にかけて置いているところも多いので、一度試してみては?

ノイアーヴァインのおつまみにピッタリなのはこれも季節の胡桃。もちろんスーパーでも売っているが、私は散歩途中で胡桃の木を発見。こちらでは落ちている実は、手に持てる範囲で採取してもいい、という条例があり(地域によって微妙に異なるが)、胡桃を拾ってみたところ、これがおいしい! 日本では胡桃というと塩味のついたものが多いと思うが、本当に新鮮な胡桃だと、薄皮が面白いように剥けて出て来るほとんど真っ白な身が、なんとも言えない上品な味なのだ。

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%93

冒頭の写真は近くの小高い丘の上に並んだ胡桃の木。この下には胡桃がごろごろ。一度拾い始めるとなかなかやめられないほど楽しい。外側の果肉部分を剥くと中には胡桃が(上の写真)。自分で採ったものを食べるというのは格別。

これに昔は秋に屠殺をした習慣から、秋の時期にしか作られないレバーを用いたソーセージと付け合わせのザワークラウト(キャベツの漬け物)をいただけば、あー幸せ。

季節限定の食べ物があるということは、もちろん季節外にはこれらの食べ物はいただけないということ。なんでも便利追求の日本では、冷凍技術や世界中に張り巡らせたロジスティックなどあらゆる手段で一年中ほとんどのものが食べられるが、それによって失ったものは結構大きいのではないのだろうか。

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%94

レバーのソーセージと、奥には血を用いたソーセージ。共に秋のシーズンのみ供されることが多い。

 

WRITER : Ayako Kamozawa

BACK