Last Danceのユニークなもの創り

先日Last Danceの3度目の展示会が、無事に終了しました。シーズンごとに年2回開催される展示会では、新作と一緒に以前に発表された作品が並んでいるのですが、それらが実にうまく溶け込んでいるのです。これはLast Danceのジュエリーが、どの時代にも受け入れられるコンテンポラリーな感覚を持っているからだと思います。この「ありそうでいて、なかなかない」センスこそ、私がこのブランドに惹かれる理由なのです。

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私はファッション誌を中心に、ジュエリー&ウォッチに関する原稿を書いています。取材先は主に欧米の伝統あるジュエラーやウォッチメーカー。長い間それらのプロダクトに慣れ親しんで来た私は、どうしてこんなに日本のものとは違うのかしら、と不思議に感じていました。それは一概に、外国製が良くて、日本製が悪い、ということではありません。ただ、身につける女性の気持ちにフィットするデザインという点では、欧米とくにヨーロッパのデザインが優っているように感じます。またテクニックの面でも、特にヨーロッパのジュエラーやウォッチメーカーは手作業を重んじ、独自の伝統製法を受け継ぐ技術者を育成しています。それは、彼の地で育まれた歴史と伝統を考えれば、当然なのかもしれませんが。

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このように割り切れない思いを抱いてきた私ですが、Last Danceのジュエリーに出会って、ようやく日本発信のシンプル&コンテンポラリーなデザインで勝負できるジュエリーが誕生した!とうれしくなりました。デザインがシンプルということは、言い換えれば、それを裏づけるクオリティが重要、ということです。Last Danceのジュエリーは、甲府の熟練の職人さんの手作業で製作されていて、高いクオリティを楽々とクリアしています。それはデザイナーの武田さんご本人が、本業のかたわら、ジュエリー制作を10年近く学んでいることと深くつながっていると思います。

彼女のもの創りは、ユニークです。たとえばブランドデビューの際のDM用に撮影されたアゲートのリング。あの愛嬌のあるフォルムは、武田さんがイメージする形を紙に描いて、アゲートをそっくりそのままカットしたものだそうです。さらに、磨きをかけて光沢を出す通常の仕上げではなく、あえてマットな質感を楽しめるように考えられている点や、石を持ち上げて目立たせるのではなく、肌に寄り添うように作られている点も、従来では考えられないこと。そうした掟破りも、創り手の中で理論と実践がうまく噛み合っているからこそ、できることだと思います。

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もうひとつ私が共感しているのが、職人さんの仕事に対するレスペクトです。日本には欧米にもひけをとらない技術があるのに、それを活かせる場所がないために、受け継がれないまま消失してしまうことが多いそうです。Last Danceのジュエリーには、テクニックを誇示するのではなく、身につけた人が使っていくうちに心地よさに気づくような技が、さりげなく用いられています。これは武田さんが、ジュエリーの仕組みと背景を知った上で、自身の制作経験に立って、「ジュエリーはオブジェではなく、使ってこそ意味がある」という考え方を実践しているから。ここに、「ありそうでいて、 なかなかない」存在の秘密があるように思います。

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Last Danceのジュエリーを実際に身に着けてみると、職人の手の技を駆使した着け心地の良さやフィット感が実感できます。たとえば私が愛用している、写真のYGチェーンブレスレットは、服に引っかかりにくく、ひとりで簡単に着脱できる、ノーストレスの優れものです。このように快適な着け心地を、卓越したセンスのデザインとともに、できるだけ多くの方に実感していただけたら、と思っています。

成瀬浩子

WRITER : Hiroko Naruse

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