モードと空間の素敵な関係

今月初めに「モードとインテリアの20世紀展」を、パナソニック汐留ミュージアムで見てきました。見どころがたくさんあって、感じるところがある展覧会でした。しかし見終わってから、思いを文章にしたいのに焦点が絞りきれず、ブログにアップするのが遅くなってしまいました、、、(^_^;)
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この展覧会は、モードが単体として存在するのではなく、衣裳をまとった人が環境と融合して初めて芸術となる、というコンセプトに基づいています。これはウィーン工房から始まった考え方で 、その活動を見学したデザイナーのポール・ポワレが、自身の装飾芸術工房を開設した際にフランスに持ち込んだと言われています。ポワレはイラストレーターのポール・イリーブによるファッションアルバムを刊行していますが、そこには室内でポワレのドレスをまとった女性たちが描かれています。ポアレによる最新モード、すなわちオリエンタリズムを感じさせるスレンダーなドレスと、東洋趣味のインテリアがマッチした図版は、いかにも(笑)という感じ。アルバム全体を通して、ポアレがこの時点ですでにライフスタイルについて考えていたことがよくわかります。そのファッションアルバムの画像が、まるで本をめくるようにタッチパネルで見られたり、ドレスに同時代のファッション誌の図版が添えられていたりと、時代背景を含めた考察がなされた展示によって、たくさんの発見がありました。

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もうひとつ興味深かったのが、アールデコ時代のインテリアの写真をイラスト化し、それを背景にして同時代のドレスを展示する、という試みです。たしかにシンプルになったドレスに似合うのは、贅を尽くした古典的なインテリアではなく、白と黒を基調にした洗練されたモダンなインテリアに違いない、とうなずけます。そこに流れているのは、20世紀初頭のフランスのデザインに共通する「アンサンブル(調和)」という概念。生活空間を洗練されたスタイルで統一する、という試みにクチュリエが加わって、モードとアートの融合が実現したのです。
しかし、すんなりと一筋縄ではいかないのがモードの面白いところ。スキャパレリの代名詞ともいえるショッキングピンクの「サーカス」ドレスは、他とは距離をおいているように見受けられます。今っぽく表現するなら、ちょっとハズしてる、といったところでしょうか。このドレスに見られる「調和」を超える何かについては、改めて考えてみたいと思います。

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ところでこの展覧会は、島根県立石見美術館の収蔵コレクションによるものだそうです。初めて拝見したのですが、展示作品のひとつひとつに、一貫した眼が感じられました。それは、誤解を恐れずに言えば、良い趣味と歴史的意義を両立したデザインが選び抜かれている、ということです。島根を訪れてみたくなりました。

成瀬浩子

WRITER : Hiroko Naruse

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