新年もジュエリーでスタート!

2022年が佳き年になりますように!今年もどうぞよろしくお願いいたします。

元旦からはや1ヶ月。アイキャッチ画像が今さらのしめ飾りなんですが、これにはワケがあります。このお正月飾りは、新潟・糸魚川の「はしだて」で藁細工職人修行中の柿沼千里さんが、同社の正月飾り(パーツ)を組み合わせて作ってくださったのですが、センターのリボン結びに注目してください。この紐状のものは、その場で藁を綯ってできた縄なんです。伝統的な藁細工は、一年の実りを神に感謝して捧げたのが始まりだそうです。柿沼さんの手もとを見ていたら、古代の人たちの気持ちがわかるような気がしました。神への祈りから始まった「縄ない」を使って、大切な人に思いを伝えたことがあったのではないかしら。たとえばミサンガのように、お守りとして身につけたこともあったかもしれない。そう考えると、ジュエリーの起源はいにしえの人々の「気持ちを表したい、伝えたい」という純朴な思いにあったのかも、、、とイメージが拡がっていきました。おかげさまで、お正月からいい夢を見ることができました。

そのしめ飾り、まだ玄関の内側に鎮座しています。伊勢では笑門飾りを一年中飾ると聞きました。(そういえば料理屋さんで時折見かけますね) 当初は立春まで飾っておこうと思っていたのですが、目にするたびに藁細工の素朴な味わいに癒されていることから、笑門飾りにならってずっとこのままにしておこうかしら、と考え始めています。
作者の柿沼さんは、展覧会で藁細工の作品を見て、この日本の伝統工芸を継承したい!と一念発起。「はしだて」の門を叩いたと伺いました。同社は毎年年末に横浜髙島屋のお正月用品催事に出店、柿沼さんは今年も担当の予定だそうです。

もうひとつ、ジュエリーの成り立ちと変遷について考えさせられた展覧会があります。それは3/13まで開催中の、「メンズ リング」展。パリにギャラリーを持ち、家具の先駆的なディーラーとして知られたイヴ・ガストゥ氏が遺したプライベートコレクションを、レコール ヴァン クリーフ アンド アーペル主催の展覧会で見てきました。中世以降、ジュエリーは権力の象徴となり、主に男性がつけていました。展覧会は5部構成になっているのですが、1部の「歴史」の展示を見ると、そのことがよくわかります。またガストゥ氏が憧れていたという「キリスト教神秘主義」のコーナーでは、王侯貴族と肩を並べるほど見事な宝石を、聖職者が身につけていた事実が明らかに。歴史から学ぶことは多い、と改めて感じました。

展覧会画像すべて(C)Lecole Van Cleef & Arpels

[上]「ヴェネツィア元首の指輪」19世紀
カーネリアンに刻まれたインタリオに、ヴェネツィア元首の紋章が。台座のベゼルを開けると、手紙の封印に使われた蜜蝋を入れる空間がある。ここは暗殺用の毒の小瓶を隠すためにも使われたという。
[下]「聖職者の指輪」1920-30年頃
イヴ・ガストガストゥ氏のお気に入りのひとつ。司教が白手袋の上からもつけられるよう、側面に幅をもたせたデザイン。アメシスト、ダイヤモンド、イエローゴールドで作られている。

コレクション全体を通して、ガストゥ氏独特のゴシックな美意識が貫かれています。見終わったあと、「美は乱調にあり」という表現がぴったりくるように感じました。通り一遍のピースを集めた展示ではないからこそ、見に行く価値がある。収集家の強い個性がビシビシ伝わってくる、エキサイティングな展覧会です。
(展覧会の詳細については、中ほどの画像をご参照ください)
ジュエリーはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。この疑問が昨年から大きな宿題になっていました。「メンズ リング」展で、ジュエリーが女性だけのものではなかった時代を知り、一歩答に近づいたように感じています。

成瀬浩子

WRITER : Hiroko Naruse

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