暗闇を照らす光

今回は日本初披露を含むハイジュエリーに加えて、日本の伝統美と秋の庭園を堪能できる展覧会をご紹介します。

本日11/23から28まで、横浜・三渓園で開催される 「フランスと日本文化のConversation ショーメのサヴォワールフェールと日本の名匠3人との対話」展。三渓園は明治の豪商で茶人でもあった原 三溪によって作られた広大な日本庭園で、各地から移設された歴史的な日本家屋が点在しています。展覧会の会場となる鶴翔閣は、20世紀初頭に原 三渓の居宅として建てられたもので、横山大観や前田青邨が集い、時には作品制作の場にもなって、文化的なサロンとしての役割をはたしていたことで知られています。そんな由緒ある日本家屋を舞台に、ショーメのハイジュエリー約60点と、日本の伝統芸術を担う3組の匠ーー竹芸家、盆栽作家、刀匠ーーの作品が、一堂に会します。「人の手が成す仕事」をキーワードに、洋の東西や立場の違いを超越した対話から見えてくるものは、何でしょうか。

会場は3つのゾーンに分かれ、それぞれにテーマが設けられています。ゾーン1のテーマは「余白の美」。四代 田辺竹雲斎による、竹を用いたダイナミックな立体作品の空間に抱かれるように、ショーメのハイジュエリーが置かれています。「編む、組む」という共通の技法を用いた作品が出会い、融合して、不思議な一体感を生み出しているように感じました。

ゾーン2のテーマは「自然を掘る」。名人 木村正彦の手になる門外不出の盆栽の横に、自然にインスパイアされて誕生した、ショーメのハイジュエリーが並んでいます。ともに自然の中に素材を見出し、人の手によって創り上げた圧巻の存在感ーー盆栽の松の白い部分はすでに枯れているのに、緑の葉は生き生きと輝いています。人が求める永遠の美とは、はたして何なのだろう、と問いかけているようです。

ゾーン3は、ジュエリーの素材でもある金属が主役。「金属の芸術」というテーマのもと、800年に渡って作刀を受け継いできた刀匠 月山貞利、月山貞伸による二本の刀と、18世紀から金細工の伝統を伝えるショーメの作品が対峙しています。そこには他のゾーンにはない緊張感が漂い、前に立つと背筋が伸びる思いです。地中に眠る鉱物から金属を生み出す奥義と、そこに新たな息吹を吹き込みながら、時代を超えて伝えていくことの意義について、改めて考えさせられました。

見終わって外に出ると、あたりはすでに真っ暗で、日本庭園の松の木の間に月が見えました。暗い夜に、進むべき道を照らしてくれる光。それは宝石の輝きを含め、人類が先人から受け継いできた伝統や文化に例えられるのかもしれない。その光を頼りに、人はこれまでも数々の困難に打ち勝ってきたのではないか、、、そんなことを考えながら月を仰ぎ見ていたら、コロナで沈んでいだ気分が、いつのまにか明るくなっていることに気づきました。
いま三渓園は、紅葉が見ごろです。展覧会期間中の11/26〜28には、16:30ころから20:00まで、紅葉や建物のライトアップが楽しめます。

※展覧会画像(盆栽のカットを除く)と告知は三渓園HPより photos:©️CHAUMET

成瀬浩子

WRITER : Hiroko Naruse

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