ジュエリーの輝きって何だろう?

9/13まで銀座メゾンエルメスの10階で、新作ハイジュエリー“BLACK TO LIGHTー闇から光“コレクションが公開されています。プレビューを見て、ジュエリーの根本について考えさせられることがありました。

展示されているすべての作品に、黒い天然石ーーブラックスピネルあるいはブラックジェイドが使われています。その黒い輝きが主役で、ハイジュエリーの基本ともいうべきダイヤモンドは、黒との対比で用いられているのみ。エルメスを象徴する馬の毛並みを彷彿させる黒の質感が、きらびやかなハイジュエリーとは一線を画しています。艶めきがありながらもシックで、革新的、挑戦的なコレクションです。
そうした独創的な外観に加えて、輝きの本質にせまるアプローチに、う〜ん、やられた!という思いです。そもそも私はこれまで、宝石が輝く存在であること、そしてより多くの輝きを求め続けていることに疑問を持ったことがありませんでした。しかしよく考えてみると、輝きは必ずしも一つとは限りませんよね。人それぞれに価値観があるように、その人にとっての輝きがあってもいいはず。どうして今まで、気づかなかったんでしょう。白い輝きを愛する人がいる一方で、黒い輝きに惹かれる人もいるでしょう。あるいはカラーストーンの豊かな輝きにに魅せられる人も。またひとりの人が、ある時は白、またある時は黒というように、スタイルによって輝きを使い分ける自由もあっていい、と思います。根源的な問いかけを発してくれた、クリエイティブ ディレクターのピエール・アルディ氏に感謝!です。

ブラックスピネルは硬くて加工が難しく、セッティングにはダイヤモンドの倍の時間がかかったそうです。またブラックジェイドに施されたサテン仕上げは、マットでもなくシャイニーでもない、ちょうど中間のニュアンスが素敵です。光の当たり具合によって微妙に変わる表情は、見ていて飽きません。セッティングや研磨のそこここに、職人の技が極め尽くされているのが感じられます。
こうして眺めていると、これまで「硬質なもの」と限定的に捉えていたジュエリーの素材に、服に共通する点があることに気づきました。エッジィな黒い輝きと、柔らかなピンクゴールドのコントラストがひとつに融けあう瞬間は、センシュアルなドレスそのものです。相反する要素どうしの組み合わせは、ファッションに通じるようにも感じられました。
上記のファッションとの関係性のくだりは、あくまでも私見、ひとつの例です。大切なのは、ジュエリーだけで完結しない、自由なスタンスに基づく発想ではないでしょうか。今後さらに、さまざまな他分野とのリンクが重要になるように思います。
さらにもうひとつ、このコレクションには「お約束」外しが。一般的には、ジュエリーにおいては輝く宝石が主でゴールドは従、と捉えられています。しかしこのコレクションでは、黒い輝きとピンクゴールドが対等に扱われているように感じました。こんなところからも、新しい感性が伝わってきます。

展示作品の中で最も制作時間を要したのは、馬具の鞭にインスパイアされたネックレスだそうです。以前にダイヤモンドとホワイトゴールドで制作されたモデルが、黒い輝きとピンクゴールドを纏って、全く違った表情に生まれ変わった姿は圧巻でした。ともあれ、百聞は一見にしかず、です。

“BLACK TO LIGHT”
9/5(土)〜13(日) 11:00〜20:00(日曜は19:00終了) @銀座メゾンエルメス10F

画像は発表会のインビテーションより

成瀬浩子

WRITER : Hiroko Naruse

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