下手でも乗馬はやめられない

 

元来、運動神経はかなり悪いものの、子供の頃から乗馬はやりたいと思っていた。けれど、なにせ東京には乗馬クラブが2つしかなく(とーっても高い上に紹介がないと入れない)、入った大学に乗馬部はなかった。だから、こちらに来てあちこちに馬が放牧されているのを見て、すぐに思った、これはやるしかない、と。

天気のいい日は外の馬場で。屋内の馬場も2面ある。周囲にはいくつも柵で囲まれた放牧場があり、馬はよく外で自由にしている。 

以来、もうすでに8年くらい乗馬を週に一度やっている。最近、こちらで知り合った日本人のご家族が首都圏で乗馬をやっていた話を聞くと、ドイツの乗馬クラブは随分と成り立ち方が違うらしい。

日本では月々の会費の上に、馬に乗った場合はその分1時間いくらで騎乗料金が必要で、ブーツやヘルメットを借りればそれも支払いがあり、結局かなりの出費になってしまったと言う。けれど、私の入っている乗馬クラブでは、払っているのは月々の会費だけ。日本円で1万円くらい。それで週に1回、1時間のレッスンが受けられる。というのも、クラブ自体が営利目的ではなく、同好の人々が集まって作っている組合のようなものなのだ。クラブの運営やコーチ、馬の世話などのために専任で働いている人は7〜8人程度で、あとは必要に応じて、クラブ会員が貢献することで運営されている。クラブ会員はここではお客様ではなく、一緒にクラブを運営する一員なのだと言ってもいい。だから大きな乗馬大会やイベントも年に6回ほど開催されるが、その前準備——草むしりや清掃、会場の設営等——や当日の会場運営——飲食物の販売や駐車場案内等もすべて会員の手で行われる。会員には小学生くらいの子供たちも多いのだが、子供たちも彼らなりにできることを手伝う。働いた分は時間で換算され、その分、翌年に支払う会費が軽減されるという仕組み。運営側で足りない人手は、会員のマンパワーで補い、出費を押さえるからこそ、驚くほど安い会費で乗馬が楽しめるのだ。

厩舎のひとつ。レッスンが終わったら、ここの掃除も会員が自分たちで行う。ちなみに、馬具の装着もすべて各自で行うのが決まり。

ドイツでは乗馬に限らず、こうした組合形式のクラブが様々な分野でありーー例えばドックスクールとかアーティストのクラブとかーー、それが社会の中で一種のコミュニティの役割を果たしている。上に書いたようなイベントの手伝いなども会費を安くするためだけでなく、会員たちの多くはそれ自体を楽しみ、互いの結びつきを強める機会にしている。日本もこういうクラブ・コミュニティがあったらいいのにと思うが、あったとしても、土台仕事に縛られる時間が長過ぎて、クラブで好きな事をして、しかも貢献する時間などとれないに違いない。働き方改革って、ほんとに実現できるのかしらん。

さて、私の腕前はというと、未だに初心者クラスでまったく上達しないが、楽しく続けていられるのがなにせ一番。実は今までに何度も落馬しているのだが、やっぱり馬は可愛いし、動物と一緒になにかできるのは格別だ。走っていると、馬と風と一体になった感じがして、下手なのにやめられない。

私がいつも乗っているディエゴ。くせが少なくて安定しているので乗りやすい。

 

この仔はバロン。首を上下に振るくせがあるけれど、反応の早いいい馬です。

 

 

 

 

 

WRITER : Ayako Kamozawa

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