ジュエリーとバレエの刺激的な関係

動きをどのようにデザインに反映するか。これは、ジュエリーにとって永遠の課題です。ヴァン クリーフ & アーペルは、その難しいテーマに積極的に挑戦してきたジュエラー。なかでもバレエに着想を得たデザインは、このメゾンならではのものです。VC&Aのジュエリーコレクションに、バレリーナモチーフが初めて登場したのは、1940年代。その後1960年代後半に、クロード・アーペルと振付師ジョージ・バランシンの出会いから、バレエ「ジュエルズ」が誕生しました。この作品でバランシンは、エメラルド、ルビー、ダイヤモンドという3つの宝石の美しさを、バレエで表現しました。一瞬の動きをデザインに閉じ込めるジュエリーと、永遠の輝きを動作で表現するバレエ。互いに刺激し合う関係は、ここから始まったといってもいいでしょう。2007年、この「ジュエルズ」の40周年を祝って、ハイジュエリーコレクション“バレエ プレシュー”が誕生。その後2012年に「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」などのロシアバレエを讃える新作を加えて、現在に至っています。

先日VC&Aの銀座本店で、“バレエ プレシュー”に関連する興味深いプレスプレビューが開催されました。それは、新国立劇場バレエ団で活躍中のバレリーナ2名をゲストに迎え、彼女たちが朗読とマイムで「いばら姫」(「眠れる森の美女」のもとになったグリム童話 )を演じる、という内容でした。登場した2人のバレリーナは、プリンシパルの米沢 唯さんとソリストの木村優里さんです。彼女たちがかわるがわる「いばら姫」の物語から、お姫さまの誕生から眠りにつくまでを朗読し、その後にバレエの動作の説明を加えながら、マイムでストーリーを表現しました。とくに面白かったのは、祝宴に招待されなかった13番目の仙女がお姫さまに死の呪いをかけるシーンです。細やかな腕や指の動きひとつひとつに意味があり、登場人物の心情が表現されていることがよくわかりました。

彼女たちいわく、「VC&Aのバレリーナのクリップは、顔の向きやトウシューズをはいた足の形、そして身体全体の筋肉の状態まで、一瞬の動きを捉えて完璧に表現しています。首をかしげた横顔に、表情が見えてくるようです」と。またスカートの躍動感に、「あるある!」と舌を巻いたそう。このコレクションが、単にロマンティックな雰囲気を倣うだけではなく、鋭い観察眼と正確な表現力によって生まれたことが伝わってきます。さらに驚いたことに、バレリーナの足もとから見上げると、スカートの裏側の細部まで緻密に仕上げられています。しかも、軽やかに!これは、高い技術力の証明に他なりません。こんな点も、ハイジュエリーを見る大きな楽しみです。

 

もうひとつ、気になったデザインがありました。それはバレリーナ クリップとは異なる視点からバレエの情景を表現した、コールド バレエ ネックレスです。「白鳥の湖」の第2幕に登場する白鳥の踊りを上から見たデザインで、センターはプリマドンナをカメオのように浮き彫りにした、約37カラットのブルーサファイア。その周りにホワイトマザーオブパールのチュチュが、いくつも連なって。群舞のバレリーナの頭は、イエローサファイアで表現されています。夢のような一瞬の動きを、こんなにもシンプルで洗練されたデザインに凝縮できるなんて!バレリーナ クリップの完璧な写実と、コールド バレエ ネックレスの見事な抽象。この両面からの表現が、VC&Aのクリエイションを支えているのです。時代を超えてパワフルに輝くハイジュエラーの、創造の一端を覗き見た一夜でした。これらを含めた”バレエ プレシュー“コレクションは、来年1月半ばまでVC&A銀座本店で展示されるそうです。機会がありましたら、ぜひ足を運んでみてください。

 

成瀬浩子

WRITER : Hiroko Naruse

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