そうだったのか!カメオのヒミツ

じつは私、アンティークカメオ好きです。日本では歴史的価値のあるカメオを目にする機会が少ないのですが、「メディチ家の至宝」展では、素晴らしいカメオに出会えます。そして、カメオにはたくさんのヒミツ(あまり知られていない事実)があるのです。
⚫️ 本来のカメオは、貴石に彫刻を施したもの
古代ギリシャ・ローマ時代に制作されたカメオには、主にアゲート(メノウ)やサードニクス(縞メノウ)、オニキスなどが使われていました。これらはストーンカメオと呼ばれます。一般に知られるシェルカメオは、後世に土産物から発達したものだそうです。
⚫️ カメオの彫り方には、陽刻と陰刻がある
素材となる石に対して、モチーフを浮き彫りにしたものが陽刻=カメオ、逆に沈みこむ沈彫りが陰刻=インタリオです。写真は第3代トスカーナ大公の妻、クリスティーナ・ディ・ロレーナを表すインタリオがついた指輪。16世紀末にフィレンツェで作られたもので、石はカーネリアンです。
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⚫️ ルネッサンスはカメオから始まった?
文化と芸術の擁護者だったメディチ家には、一大コレクターだった初代から受け継いだ、古代ローマに由来するカメオコレクションがずらり。それらを飾って、訪れる客に見せていたといいます。レオナルド・ダビンチやミケランジェロによる、カメオのデッサンも残っているそう。とくにボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」や「プリマヴェーラ」は、カメオに描かれた、のびのびとした人間的な表現にインスパイアされて誕生した、との説が有力です。
⚫️ メディチ家の威光を伝える、「両面カメオ」があります
写真は15〜16世紀にかけて制作されたペンダントトップ。アゲートの両面に聖書を題材に、表には「降誕」、裏には「東方三博士の礼拝」が彫刻されています。アゲートの厚みを感じさせないように表と裏を陽刻した、名もなき彫玉家の腕前は必見です。さらにのちに、七宝に彩られた金のフレームと、ダイヤモンド&サファイアで装飾されました。
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⚫️ なぜこれらの名作を、現在も一同に揃って見ることができるのでしょう?
18世紀にメディチ家の最後の生き残りとなったのは、アンナ・マリア・ルイーザという聡明な女性でした。彼女はメディチ家の領土が列強の支配を受けることになった時、「自分の死後、美術作品などすべてをトスカーナ大公(となる人物)に託すが、それらをフィレンツェから持ち出さず、市民に公開すること」との条件を入れた遺言書(家族協約)に署名しました。その協約が守られたおかげで、メディチ家の至宝である美術品は、かつての宮殿であるウフィツィ美術館を中心に、フィレンツェから出ることなく保存されているのだそうです。最後の展示室に、彼女の肖像画が飾られています。

この展覧会で数々のカメオのヒミツを知って、ますます好きになりました。 成瀬浩子

WRITER : Hiroko Naruse

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