2016.03.08 art jewerly life
熟練者
前回、若きアルチザンとして、大寄さんのことに触れた。
今回書かせていただく藤島さんは、大寄さんのお父さんと同年代で旧知の仲であり、仕事仲間でもある。
藤島さんもお父さんの代から受け継いで職人になった人だ。
高校を卒業してすぐ仕事場に入ったが、小さいころから父親の仕事を見て育ったので、何の違和感も無く当たり前のように仕事に馴染んだという。それから50年。ずっと作り続けて来た。
ジュエリー製作は主に3つの仕事に分けられる。
宝石の研磨
貴金属加工
水晶美術彫刻
この内の貴金属加工が藤島さんの仕事だ。
甲府はもともと水晶の産地だった。そのため、京都から職人を呼んで技術を習得し、その結果、仏像をはじめとする美術品を中心に、水晶の研磨では最高の技術を持つようになった。さらに時の役人の先見の明で、身につけるジュエリー製品の製造にも力を入れるようになり、アメリカを中心に輸出するまでの一大産業に成長した。大正から昭和のことだ。そのジュエリー製作の中心になったのが貴金属加工の仕事だ。
磨き上げられた水晶や貴石をネックレスやブローチや指輪に仕上げるのは貴金属加工無しには成り立たない。装飾やデザインを支えるのは秀でたその技術なのだ。戦後の時代の変化によって甲府の産業も様々な変化を強いられたが、技術はしっかり受け継がれて来た。
藤島さんの作品は、甲府市内にあるジュエリーミュージアムの展示に時々出されるのでも見ることができる。
繊細なその仕事には目を見張る。彫金をやったことがある人なら、誰もがその技術に驚くはずだ。細部に渡って神経が行き届いた作りはまさに熟練の仕事だ。写真は、製品として作ったものではないが、これを見て、藤島さんに仕事を依頼する人は多いはずだ。私もその一人だ。お嬢さんの結婚式の為に作ったというティアラも素晴らしい。
私が作ろうとするものは藤島さんの作品に比べるとシンプルなものばかりだが、シンプルなものほど作り手の技術が明確にわかる。当然、藤島さんは期待を裏切らずに作り上げてくれる。私が作ったサンプルは子供がつたない手で作ったも同然だ。それをプロ中のプロが作ってくれるのだから心強い。
出会えてラッキーでした!
実は藤島さんは、山梨の日本スケート連盟の普及部の指導員でもある。12月になると一週間は大学に教えに行く。
ジュエリー職人の藤島さんがすいすいと氷の上を滑っている姿はかっこ良いだろうなと想像する。
その上、ここのところ、 なかなか手をつけられないでいるようだが、趣味でヨットの船体の製作もしている。木で組まれた船体が工房の一角で仕上がりを待っている。
小さいジュエリーも大きいヨットも、確かな技術で美しく作ることに変わりはない。
WRITER : Chigako Takeda