スキャパレリの衝撃

丸の内の三菱一号館で開催中(〜5/22)の「PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服」展に行ってきました。オートクチュール全盛期の究極のオーダーメイド、とりわけ日本ではあまりお目にかかれない、エルザ・スキャパレリの服がお目当てです。ショッキングピンクの生みの親として有名な彼女は、マドモアゼル シャネルと同時代に活躍したクチュリエ。ファンタジックなクリエイションを得意とし、ダリとのコラボレーションによるハイヒール型のシューハットやロブスターを描いたドレスなど、シュールレアリスムを体現するような作品も残しています。

 

会場に展示された、ショッキングピンクに金糸で太陽を刺繍したマントや、大きなブロックチェックのドレスに混じって、私の目を釘付けにしたのは、爪がついた黒の長手袋でした。ゴールドの長い爪とスエードの質感が、まるで獣のようにしなやかでエキセントリック!奇想天外な発想を生かした完璧なクオリティの作品こそが、スキャパレリの真骨頂なのです。このように彼女のアート感覚溢れる自由なイマジネーションは、服だけでなくバッグや帽子、靴、帽子などの小物や、さらにジュエリーにまで発揮されました。

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スキャパレリのジュエリーは、現在にも通用する楽しさに満ちています。ときにユーモラスで、またあるときはセンセーショナル。鮮やかなカラーストーンを用いて、自然界のモチーフを生き生きと表現したジュエリーなど、20世紀はじめに誰が目にしたことがあったでしょうか。当時スキャパレリの下でジュエリー制作に携わっていたのが、ジーン・シュランバーゼーです。第2次世界大戦中にアメリカに移住した彼は、後にティファニーのデザイナーとして活躍することになりました。ジュエリー界に彼が残した大きな功績は、スキャパレリとの仕事を通じて培われたものだったのです。
この展覧会でスキャパレリの衝撃的な作品にふれて、モードだけでなくジュエリーにも色彩の楽しさを持ち込んだ彼女の仕事を、もっと深く知りたいという意欲がわいてきました!
(なお「オートクチュール」展にはジュエリーは展示されていません)

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成瀬浩子

WRITER : Hiroko Naruse

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