若き職人

甲府には高い技術力を持った若い職人さんが沢山いる。

その中の一人、大寄智彦さんと仕事をすることになった。「貴石彫刻オオヨリ」の、お祖父さんの時代から研磨を主とする仕事を受け継いだ三代目だ。「オオヨリ」の工房にはお父さんをはじめもう一人の職人さんがいて、3人で細工台や彫刻機に向かって黙々と仕事をしている。

一つの作品のために何日もかけて仕上げるものもあれば、量産のOEM(Original Equipment Manufacturer 他社ブランドの注文を受けて製造する)の仕事もある。研磨の仕事は奥深い。今回、Last Danceで発表したメノウのリングやピアスの製品は、(サイトのページでご覧下さい)丸い形も四角い形もあたかも機械で形成されたように見えるが、全て大寄さんの手によって研磨されて形作られている。また、今月、銀座の和光6階で19日から25日まで開催される「リング リング リンク」では、水晶の美しさを最大限に生かしたCrystal Domeと言う素晴らしいリングを見ることができる。甲府市のジュエリーミュジアムの常設展示では別の作品を見ることができる。

それらはまさに職人技だ。

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その大寄さんが2年前に自分のブランドを立ち上げた。20年近く前から、大手のブランドが海外に製造の拠点を移し始めてからは、徐々に甲府の工房や製造所にも影響が出始め、衰退と言う言葉も聞かれるようになって久しい。その状況に負けずに、将来を見据えてスタートさせた。先代まではあり得なかったことに挑戦したのだ。そして甲府市の丸の内 エリアにセンスの良い「TO LABO」という店(スタジオも兼ねている)もオープンさせた。そこでは私達が普段身につけやすいジュエリーが綺麗にディスプレイされている。その隣にもやはり若い仲間が店を構え、それぞれが職人の枠を超えた新しい動きを作ろうとしている。

大寄さんははまた、東京や大阪の大手百貨店で研磨のデモンストレーションを行いながら自分のブランドのアプローチと販売に力を入れている。

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大きい都市でも若い世代は頑張っているが、甲府にもそれに負けないパワーで仕事をしてい人達がいる。

優れた技術を持ち、新しい仕事の仕方を探る大寄さんと仕事ができる幸運に私は恵まれた。

次回は、大寄さんの先輩である職人さんを紹介します。

 

Crystal Dome 説明文

貴金属を一切使用せず無色透明な水晶の輝きのみを使った光を纏うようなジュエリー。

クリスタルドームという、天然石を水晶の中に封入する技術を用い、デリケートな原石を覆った。クリスタルドームによってもたらされるレンズ効果や輝きで、水晶の中に潜むさらなる透明性を追求した。

TO LABO / T.055-232-1456/www.tolabo.jp

 

武田千賀子 Chigako Takeda

 

 

 

 

WRITER : Chigako Takeda

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