タクシーの愛で方 その1

突然だが、私は生粋のタクシーフリークである。
収入の大半はタクシー代に溶け、デート中には珍しいタクシーを走って追いかけ女性に怪訝な顔をされるような男だ。
そんな私がこのブログでは、みなさまのタクシーライフを彩るお手伝いをしていきたい。

まず、タクシーの最大の魅力は「ハードウェアもソフトウェアも愛せる」ということだと思っている。ハードウェアとはタクシーの車両そのもの、ソフトウェアとはハンドルを握るドライバーのことを指す。第一回目の今回は、前者の「ハードウェアの愛で方」について言及していきたい。

多くの人は「タクシーなんてどれも同じ」と口を揃えて言う。しかし、それは大きな間違いであり、「みんな同じに見えて、みんな違う。」ということに気づくことで、タクシーはグッと魅力的に感じられるようになるのだ。

例えば、冒頭の画像は日産『Y31セドリック』という、ごく一般的にタクシーに用いられる車種である。およそ30年前から今日に至るまで、大きなモデルチェンジをせずに街中を走るこの姿に、見覚えのある方も多いのではないだろうか。しかし、冒頭のY31セドリックは只者では無い。この車は通常のY31セドリックに比べて、後方ドアが150mmも延長されている。これは『Brougham VIP Long』と呼ばれる、1990年前後に限定生産されていたリムジンモデルで、今やほとんど見ることはできない。内装や足廻りも豪華な仕様に変更されており、バブル時代の嗜好が色濃く反映された貴重なモデルである。ちなみに、都内には1万台以上のY31セドリックが走っているが、『Brougham VIP Long』に関しては私が確認できた限りで4台しかいないと思われる。

このように、一見どれも同じに思えるタクシーでも、1台1台に微妙な違いが存在する。また、その差異への「気づき」をストックしていくことで、各タクシー事業者のキャラクターや経営姿勢まで見えてくるようになる。タクシーのハードウェアを制するものはタクシー業界を制すのだ。

あなたが次にY31セドリックのタクシーを停めた時、このブログを思い出して欲しい。目の前に停まったドアは、きっと冒頭の画像のものより少し短いだろう。いや、もし同じくらい長いドアならば、あなたはとても貴重な1台を停めた幸運の持ち主ということである。

WRITER : Kei Takakuwa

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