オットー・クンツリのジュエリーには●●●が効いている!

東京都庭園美術館で開催されているエキジビションで、目からウロコ!オットー・クンツリ観が変わりました。これまで私が知っていた作品は「2人のためのリング」や「美女のギャラリー」 などと断片的で、その狭い知識の範囲で、オットー氏をエッジィなコンセプチュアルアーティストと捉えていました。それは間違いではないのですが、今回トータルな世界観にふれることで、オットー氏のクリエイションのさらに本質的・根源的な部分を感じとれたように思います。

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オットー氏の作品は、シンプルなフォルムが特徴です。それを生み出すまでに考えぬいたはずなのに、そんなことはおくびにも出さず、まるでポケットから取り出してポンと置いただけのように、さりげなく見えます。それはたえず「ジュエリーとは何だろう?ジュエリーにできることは何だろう?」と問い続けた結果、簡潔なかたちのジュエリーが、世界中のどんな人ともコミュニケーションできる最高のツール、という結論に達したからではないかと思います。

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オットー氏はお茶目です。庭園美術館の本館の正面に立つと、建物の最上階に赤いドットが配されていて「オットー・クンツリ、ここにあり!」と高らかに宣言しているのがわかります。今回のエキジビションで、彼は「ビッグ・ファミリー」という観客参加型のインスタレーションに挑戦しました。それはちゃぶ台上の343個の穴に観客が持ち寄った「丸いもの=真珠」を置くことで、世界に唯一のパールネックレスが完成する、というものです。そして同じ部屋に、対照的なサイズで、お茶目なネーミングの作品が。その正体は「ビッグ・ファミリー」を見た後で振り返ったところにディスプレイされている、ミッキーマウスの形をしたパールのピアス「ミキ・モット」。少しでもジュエリーに興味のある人なら誰もがニヤリとしそうなユーモアに、たちまち大ファンになりました。

ここで話題は、最初のタイトルに戻ります。●●●の正解は、「パンチ」ではなく「トンチ」です。エキジビションを見終わったあと、暖かい気持ちで胸がいっぱいになりました。そしてオットー氏の愛ある「トンチ」こそが、これからのジュエリーに大切な要素なのでは?という思いを抱きながら、夕闇に包まれた庭園美術館を後にしました。

[オットー・クンツリ展]は、12月27日(日)まで東京・白金台の東京都庭園美術館で開催中です。

WRITER : Hiroko Naruse

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